お焼香の後に、手は拭かない

 お葬式の時、お焼香をすると葬儀屋さんがお手拭きを渡してくれることがあります。

 香をつまんで汚れた手を拭いてくださいという、粋な計らい。葬儀屋さんもなかなか、気が利きますねぇ

 そうじゃなくて。
 お香はきれいなものです。汚れたものをお葬式の場で燃やすわけないじゃないですか。

 また、お葬式の場は何となくケガレているような気がするから、手を拭くことによってケガレを落とした気持ちになる。思うにそれが、お焼香の後に手を拭くという行為の本質なのではないでしょうか。

 お香はきれいなものという先の文と思い切り矛盾しますが、仏教ではきれいなものと汚いものなどという区別はしません。すべての存在は「ただ、それ」であるだけで、それに付随するさまざまな属性は、人間が後から理屈をこねてくっつけただけに過ぎません。

 もちろん、ケガレというものも存在しません。すべて、人間の頭の中で作られたものなのです。それに縛られていることの、なんと不幸なことか。



 あなたの信仰がどうであれ、仏式のお葬式に参列するということは、仏教の教えに従って故人の冥福を祈るということであり、故人もまたそれを望んでいるということです。

 だから、手を拭かないようにしましょう。その行為は仏教の教えを否定して、きれいなものと汚いものという区別をするということ、きれいな場とケガレた場とを区別するということ。

 知らなかったのならば仕方のないこと。しかし、あなたは今、知ってしまった。
 差し出されるお手拭きを断る必要はありません。いただいた後、手を拭かずにしまってしまえばいいことです。

 仏教というのは、哲学・思想を突き詰めることが目的ではなく、その教えを実践すること、行動に表すことがすべてです。

制作・著作 宗教法人正太寺